【借家契約における造作買取請求権②】
造作買取請求権を行使するための要件
以下の①②③の3つが要件となっている。
①貸主の同意を得た上で取り付けた造作であること
まず、貸主の同意を得た上で取り付けた造作であることが必要である。
貸主としては、勝手に取り付けられた造作について買取を求められるからである。
この点、借地借家法の条文上も「建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した・・・造作」と明記されている。
②建物に「付加」された物であること
次に、建物に「付加」された借主の所有物である必要がある。
「付加」は、「設置」と「付合」の中間的な概念と位置付けられているので、まず両極にある「設置」と「付合」の中身をみていくと、「付加」の概念もつかみやすい。
「設置」とは、冷蔵庫など、床に固定することなく単に物を置いている状態のことであり、設置されているにすぎない物は、造作買取請求の対象とはならず、むしろ原状回復義務の対象として借主はその物を撤去する義務を負う。
これに対して「付合」とは、たとえば壁に防音材や断熱材など「新たに組み込み、もはや既存の壁と一体となって壁を取り壊す際にそれだけをきれいに取り外すことができなくなった場合のように、借主の取り付けた物が、建物の躯体自体と一体となった状態を言い、この場合は、造作(防音材や断熱材)の所有権は貸主に移転する。
したがって、付合した物について借主からの造作買取請求権は問題にならない。
そして、造作買取請求権の対象となる「付加」の状態とは、このような「付合」と「設置」との中間的な概念であり、具体的には、畳や網戸、障子のほか、たとえばレストラン用店舗建物に取り付けられた調理台、レンジ、食器棚、ボイラー、ダクト等の設備一式など、「あくまで建物の躯体からは独立しているものの、建物躯体に附属され、建物と一体として扱われる状態の物」をいう。
ただ、実際には、「付加」か「付合」か「設置」かという判断は微妙なことも多く、裁判でも争われるところである。
③造作が建物の使用に「客観的便益」を与える物であること
さらに、造作が建物の使用にあたってあくまで「客観的に」役に立つものである必要があり、借主の特殊な目的のために使用する設備などは造作買取請求権の対象に含まれないとされている。
したがって、例えばレストラン用店舗建物の場合、どのような飲食店舗であっても使用できる一般的な厨房設備であれば、建物の使用に「客観的便益」を与える物といえるが、割烹料理にしか使用できない特殊な調理設備の場合、この要件を満たさず、造作買取請求権の対象とはならない。
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