【賃貸目的物の一部が使用できなくなった場合②】

実務上の対応


改正民法の問題点
 改正民法611条1項によれば、従来の民法のように借主からの減額請求があって初めて減額されるのではなく、賃貸目的物の一部が使用できなくなった時点から、当然に減額の効果ご発生することとなる。

 したがって、貸主としては、借主から「しばらくバタバタしていて連絡できなかったが、実は過去の時点から賃貸目的物の一部が使用できない状態となっていたので、本来であれば減額されたはずの賃料額との差額について、現在までの分を返還してほしい」などと、後になって過去分の清算を求められるケースが想定される。

 このような場合には、本当に借主の主張する時期に賃貸目的物が使用できない状態となったのか、なぜ通知ができなかったのか、といった点について、紛争が生じる。

 たとえば、貸主としては、過去に通知を受けていれば早急に修繕を施し復旧することができたにもかかわらず、通知を怠った借主が減額請求をするは権利の濫用であり受け入れられないと反論し争いとなるであろう。

 また、賃貸目的物の一部が使用できない場合に、その割合の評価の仕方についても問題となりうる。

 たとえば、面積100㎡の建物のうち30㎡の部分が使用できなくなった場合、単純に賃料は30%減額されるとも思われるが、これが飲食店舗のうち厨房部分が一切使えなくなるような場合であれば、もはや店舗の営業自体ができなくなってしまう。

 このように、使用できないのが一部であっても賃料の減額割合を考えるにあたっては「100%使用できない」と評価すべき場合とあるだろう。
 
 逆に、使用できなくなったのが従業員用の喫煙スペースであった場合、店舗営業には全く影響がないのであるから、減額割合は単純な面積割にの30%より小さく評価すべきだろう。

 あるいは、災害によって毎日一定の時間帯だけ停電になったというような場合、たとえば同じ3時間であったとしても、真夜中のほとんど活動しない3時間であるのか、昼間の活動時間の真っ只中の3時間なのかで、「使用できない割合」の評価は大きく変わりうる。

 このような「賃貸目的物が使用できない割合」の算定の仕方については改正民法で定められていないため、紛争となることが予想される。

契約書作成時のポイント
 これらの紛争の発生を予防するためには、賃貸借契約書において、借主に対して貸主への通知義務を明示的に課すとともに、減額割合の算定方法についても契約書の中であらかじめ定めておくことが有効である。

 減額割合こ算定方法をあらかじめ定めることが難しい場合でも、解決方法についてできる限り具体的に規定しておくことが望ましい。

以下の記載例を参考に

 借主は建物の一部が使用できないような状態にあることを発見した場合には、直ちに貸主にその旨通知し、これに対し貸主は、建物の使用が不可能となった部分の面積の割合を確認し、当該部分の利用方法等を踏まえ、借主と協議の上、賃料を減額する割合を決定するものとする。
 借主が上記通知をしなかった場合には、通知の時点より前に発生した建物の使用不可能状態に基づく賃料の減額は請求できないものとする。

不動産賃貸管理のRIEGLE

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