【共益費・管理費②】

共益費の性格

実費負担の原則・公平負担の原則
 共益費等の性格を考える上で重要なのは、共益費等は賃料と違って「公平性」が重視されるという点である。

 この点、賃料は、貸主が使用する建物の床価値をいくらと考えるかという、ある意味主観的に決定されるとのであるから、当事者双方が合意する限り自由に設定することができる。

 その賃料が相場より高かろうが低かろうが、当事者が納得して合意したのであれば有効である。

 これに対し共益費等は、当事者間で自由に定められるものではなく、①共用部分の維持管理に実際にかかるコスト(実費)をベースにしなければならず、また②各入居者にとって公平平等に負担させなければならない。

 このような共益費等の性格を「実費負担の原則」、「公平負担の原則」という。

 これらの考え方が顕著に表れた裁判例を紹介しよう。

裁判例
 「実費負担の原則」や「公平負担の原則」の考え方に基づいた有名な裁判例として、大阪地裁平成18年11月6日判決が挙げられる。

 なお、同判決は共益費についての裁判例ではなく、「直接費」つまり、テナント区画内の電気代、水道代を貸主が徴収する場面に関する事案であるが、共益費についてもあてはめることができる。

 同裁判例は、さまざまなスナック店が入店する商業ビルにおいて、借主である各スナック店舗が使用する電気代や水道代について、貸主であるビルのオーナーが一括して電力会社や水道会社に立替払いをし、その後貸主が各スナック店舗に対し「そこ料金に維持管理コストを加算した額」として、実際の電気・水道料金よりも高い金額(特に電気料金については、実費の実に2倍近い金額)を請求し徴収していたという事案である。

 借主である各スナック店舗が当該ビルから退去する際、これまでに支払ってきた料金はあまりに高く過払いであったとして、一部の返還を求め裁判となった。

 直接費の請求において、実費に加えてどこまでの割増請求ができるのかについて、裁判所の判断が注目された。

 裁判所は、電気や水道を使用するのに必要な設備(電気設備や水道設備)の設置や、保守点検などの維持管理の為に貸主が実際に負担した費用を計算し、その費用を超える金額を各スナック店舗が支払った分は「過払い」にあたるとして、ビルオーナーに一定金額の返還を命じた。

 具体的には、電気設備については、実際の電気料金の28%程度の維持管理コストがかかっていたと算定し、実際の電気料金の1.3倍を超える部分については「過払い」として、貸主に対し借主への返金を命じた。

 また、水道設備については、実際の水道料金の17%程度の維持管理コストがかかっていたと算定し、実際の水道料金の1.2倍を超える部分については「過払い」に該当するとした。

 このように、直接費については、裁判所は、あくまで「実費」がベースであり、それを超える金額の負担を借主に求めることは違法となることを明らかにした(「実費負担の原則」)。

 また、同時案では、電気設備や水道設備について、実際の設置や維持管理コストを反映した上で、すべての借主に対し「実費の1.3倍」とか「実費の1.2倍」という同一の基準で負担すべきであると判断した。

 このように、各借主が使用料金に応じて一律公平な割合でコストを負担すべきと判示した点は、「公平負担の原則」をまさに反映しているものといえる。

不動産賃貸管理のRIEGLE

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