【共益費・管理費③】何をもって「公平」というか?
何をもって「公平」というか?
「公平負担の原則」とはいっても、複数の借主が入居する建物の共用部分は、実際には借主間において必ずしも公平平等に使われていないケースも多い。
たとえば、高層の建物に設置されているエレベーターは、1階の借主はほとんど使用しないのであるから、エレベーターの維持管理費用を1階の借主にも他の階の借主と同様に負担させるのは不合理ではないか、とも考えられる。
まさにこの点が「公平負担の原則」に反しないかが争われた裁判例として、東京地裁平成5年3月30日判決がある。
同裁判例は、1階が店舗で、2階以上が居住用マンションである建物において、契約書の条項上は「借主は、契約面積の比率に応じて管理費を支払う」と規定されていたところ、1階の店舗の借主が、エレベーターを利用するのは2階以上の居住部分の住人のみであるにもかかわらず、エレベーターを使用しない1階店舗も契約面積の比率で管理費を負担させられているのは不合理だとして争った事案である。
このような1階店舗の借主の主張に対し、裁判所は、
①各借主が建物利用により得ている利益は必ずしも一致しているとは限らず、利用状況も異なるのが通常であること、
②そして管理費の額を各借主の利用状況に応じて全て正確に反映させることは不可能であること、
③したがって各借主の間の利用状況の差についてはある程度目をつぶり、一律に面積比で管理費を負担させることは合理的な方法であると判断し、1階店舗の借主の主張を退けた。
このように、「公平負担の原則」とはいっても、共用部分の利用状況に応じて共益費を厳密に割り振ることは現実的に不可能であるから、合理的な方法(たとえばこの裁判例のように、契約面積の比率に応じた負担を求める、あるいは契約面積だけでなく、各店舗の営業時間も考慮して負担を求めるなど)であれば、同原則に反することはない。
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