【「フルローン」は諸刃の剣】
物件の価格全てをカバーするフルローンやそれ以上の借入をするオーバーローンは資金ゼロから不動産投資ができると人気です。しかし、知識や経験のないまま進めるのはやはりリスクが大きいようです。
資金ゼロで投資は可能?
昨今はフルローンやオーバーローンを推奨して、
「資金ゼロからはじめられる」という謳い文句で物件購入を煽る業者も多いようです。
しかし、どんなことにもメリットの裏側にはデメリットがあります。
それなのに、メリットだけを見て多額の借金をすることは非常に危険です。
また、フルローン利用者のなかには、「手元の資金を使いたくないから」という理由でフルローンを受けるのではなく、本当に「資産がほぼゼロ」という状態で不動産投資をはじめてしまう人もいます。
これは、長い目で見ると大きなリスクを抱え込むことになります。
企業の経営と同じと考えるとわかりやすいのですが、他人のお金を使ってビジネスをするわけですから、調達した金利よりも高いリターンを上げていれば、その分は儲かります。
ということは、借り入れの比率は高ければ高いほど、自己資本比率がゼロに近ければ近いほど、絶対に儲かるという理屈になるわけです。
レバレッジがマイナスに作用すると身動きがとれない
一方、レバレッジをかけた場合の問題点は、逆回転したときに、どうにもならなくなるということです。
頭金をまったく入れていないということは、最初の頃の返済の大部分は金利であり、元本の減りが極めて遅いということです。
そして、不動産投資では突発的な設備の故障など、想定外の出費がつきものです。
退去や家賃の滞納など、入るはずのお金が入ってこない、ということもよくあります。税金の支払いだってあります。
つまり、収支シミュレーションどおりにキャッシュフローが積みあがっていくとは限らないのに、いざというとき、手元に余裕資金がないと、どうしようもなくなるというリスクがあるのです。
どうしても空室が埋まらなかったり、何らかの理由で収支がマイナスになったりして、売らなければいけなくなる可能性もあります。
そんなとき、フルローンやオーバーローンで買っていると、たとえば5年保有していても、残債がほとんど減っておらず、売値を下げられずに売れない、ということにもなりかねません。
2割程度の自己資金が必要
ある新人投資家の話ですが、1棟目の物件として、約2億円の地方のRCマンションをフルローンで買いました。
この人はサラリーマンとしてそこそこの給料をもらっており、それまでに借り入れもなかったため、金融機関からはすんなりとフルローンが出ました。
しかし、すべてうまくいったわけではなく、融資期間が延びず、返済比率が7割を超えてしまいました。
この男性はシミュレーションをした際に、危ないかもしれないと思ったのですが、「いまどき、フルローンで買えて利回り10%を超える物件なんて滅多にありませんよ」という業者の言葉に背中を押され、購入を決めました。
ところが、この物件は買った月から毎月、20万円以上の赤字を垂れ流すことになりました。
原因は入居率の低さです。
その投資家さんは、「買った月は赤字になるかもしれないけれど、自分で営業に回ってすぐに満室にすれば、キャッシュフローはプラスになるから大丈夫」とポジティブに考えていました。
しかし、実際には営業を頑張ってもなかなか申し込みは入らず、そうこうするうちに、ポンプまで壊れて、銀行口座はスッカラカンになってしまいました。
「30年ローンを組んだのに、このままずっと赤字だったらどうしよう。自己破産するしかないのか・・・」と、その投資家さんは一時期、うつ病寸前までいったそうです。
幸い、その後しばらくして、この物件は満室になりましたが、返済比率が高かったため、しばらくの間は気が気でなかったそうです。
この男性のような例は、決して珍しくはありません。
彼は独身でしたが、結婚していて生活費に手をつけることになれば、家族の将来にかかわる大きな問題になるでしょう。
不動産投資の知識や経験が十分でないうちに、フルローンやオーバーローンで多額の借金をすることは、大きなリスクがあるということをもう一度理解しておきましょう。
このようなリスクを抑える方法としては、融資を受ける場合にも、売買金額の2割程度の頭金と諸経費の分くらいは自己資金を用意することをおすすめします。
また、融資期間についても、「長ければ長いほどいい」ではなく、そのリスクも理解しておくべきです。
固定金利なら比較的安心といえますが、長期ローンは遠い先の賃料や修繕費の増加など、読めないリスクを負うこととイコールだからです。
融資を賢く利用することは大事ですが、リスクをとれる範囲で、ということを心がけましょう。
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